「医療安全調査委員会設置法案(仮称)大綱案」に対する意見

3.医療安全のためのプロフェッショナルオートノミーの尊重

第8 委員の任期等
5 委員、臨時委員及び専門委員は、非常勤とする。ただし、地方委員会の委員のうち△人以内は、常勤とすることができる。

主たる委員は専従とすべきである。第三者機関が医療安全から紛争解決へと目的を変化させ、規模を縮小させたことに伴って、大綱案では、監督官庁の権限が拡大されている。元来、医療事故の原因究明も医療安全の向上も、医師・医療関係者の自律的努力によって達成されるべきものであり、現状がどうであれ、制度設計の段階で、そのような仕組みを組み込んでおくことが望ましい。
 我々の提言書「2-3 医療事故対策としてのプロフェッショナルオートノミー」より抜粋し、改めてその重要性を強調したい。いかなる法的、制度的枠組みも、それを効果的かつ実効たらしめるものは、医療関係者や法律家、行政、政策立案者といったそれぞれの立場の利害得失に基づく議論ではなく、医師・医療関係者の自律的な努力を促し支えながら、ともに協調して医療事故に向き合い、これからの医療のあり方を考えるという国民的合意である。

(生存科学研究所政策研究班 政策提言書 2007月10月 診療関連死の原因究明から始める医療安全より抜粋)

日本の学会は、研究者の団体として設立運営されてきたという経緯はあるものの、すでに医業の専門性を担保する専門医制度に足を踏み入れており、業としての医療に対して無責任ではあり得ない。学会はプロフェッショナルオートノミーのリーダーシップを発揮する主体に脱皮しなければならない。 プロフェッショナルオートノミーの発現に際しては、以下の点に留意すべきである。

【1】医療安全委員会の設立に当たって、各専門機関は初期判定員(メディカルエグザミナー)や原因調査分析委員、院内調査に協力する外部委員などの名簿を自発的に作成する等、積極的な協力が必要である。
【2】医療安全委員会により処分を要すると判断された場合には、組織及び医療者個人のそれぞれについて、所属する専門機関(学会、病院団体など)が専門的見地からすみやかに再発防止策を講ずるべきである。
【3】原因分析の結果、是正されるべき点が明らかになった場合には、当該専門機関は行政や刑事の処分を待つことなく再発防止の観点から自律的に教育と処分を行わねばならない。
【4】透明性を確保するために、原因分析の結果については公開を原則とするべきである。
【5】処分を検討する判定委員会のメンバー構成としては、公平性を担保するために、医療者と非医療者の割合に大きな差が生じないよう努力すべきである。
また、第3次試案では、院内事故調査について、一定規模の機能を持った病院について医療法上設置が義務付けられている「安全管理委員会」業務とするとしていた。しかし、大綱案では何ら言及されていない。事故の原因について、一番知りうる立場にあるのは当該医療機関等であり、また、医療機関での調査体制を育成していくことで、医療機関に求められる自浄作用と改善に繋げていくことが大切である。医療安全調査委員会での初期判定員(メディカルエグザミナー)による篩い分けにより、院内事故調査となった事案でも公正、中立透明性の確保から結果の報告を求めていくべきである。

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