(46)医療事故は、システムエラーにより発生することが多いことが指摘されているが、医療事故に対する現在の行政処分は、医師法や保健師助産師看護師法等に基づく医療従事者個人の処分が中心となっている。
(47)地方委員会では、医療の安全の観点からの調査が実施されることから、医療事故に対する行政処分は、医療の安全の向上を目的とし、地方委員会の調査結果を参考に、システムエラーの改善に重点を置いたものとする。
(48)具体的には、以下のとおりとする。
システムエラーの改善の観点から医療機関に対する処分を医療法に創設する。具体的には、医療機関に対し、医療の安全を確保するための体制整備に関する計画書の提出を命じ、再発防止策を講ずるよう求める。これにより、個人に対する行政処分については抑制することとする。
医師法や保健師助産師看護師法等に基づく医療従事者個人に対する処分は、医道審議会の意見を聴いて厚生労働大臣が実施している。医療事故がシステムエラーだけでなく個人の注意義務違反等も原因として発生していると認められ、医療機関からの医療の安全を確保するための体制整備に関する計画書の提出等では不十分な場合に限っては、個人に対する処分が必要となる場合もある。その際は、業務の停止を伴う処分よりも、再教育を重視した方向で実施する。
(49)なお、医療事故に対する行政処分については、医療従事者の注意義務違反の程度の他、医療機関の管理体制、医療体制、他の医療従事者における注意義務の程度等を踏まえて判断する。このため、医道審議会における審議については、見直しを行う。
(50)本制度の実施に当たっては、組織面・財政面の検討を加えた上で法整備を行う必要があるが、施行に当たっては2〜3年の準備期間をとるものとする。
(51)本制度の確実かつ円滑な実施には、医療関係者の主体的かつ積極的な関与が不可欠となる。今後とも広く関係者はもとより国民的な議論を望むものである。
引用:医療の安全の確保に向けた医療事故による死亡の原因究明・再発防止等の在り方に関する試案
― 第三次試案 ― 平成20年4月 厚生労働省